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第13回『このミステリーがすごい!』大賞、優秀賞を受賞して作家デビューをした神家正成のウェブサイトです。

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深山の桜Miyama no Sakura

深山の桜 単行本深山の桜 文庫

2015年3月6日単行本発売 2016年3月4日文庫化 宝島社

南スーダンの自衛隊宿営地で頻発する変事を
定年間近の准尉と若い士長のコンビが追う!
正統派自衛隊ミステリー

 上記は第13回『このミス』大賞の1次選考を通過した際に、選考委員の杉江松恋さんに付けて頂いた3行紹介です。冒頭部分の内容が『このミス』大賞のページで公開されています。

 小説の舞台はアフリカの中央部に位置する南スーダンです。2011年7月にスーダン共和国から独立した南スーダンは、世界で一番新しい独立国家です。同時に世界最貧国の一つです。国際連合平和維持活動(PKO)として国際連合南スーダン派遣団(UNMISS)が派遣されています。
 そこには2012年1月から2017年5月まで、自衛隊も派遣されていました。1991年のペルシャ湾への掃海部隊の派遣を皮切りに、カンボジア、ゴラン高原、東ティモール、イラク、ハイチ、ソマリアなどと自衛隊の海外派遣は続いています。自衛隊の海外派遣は賛否両論がありますが、限られた制限の中で、派遣された自衛隊員は自らの任務を粛々と行っています。

 その南スーダン派遣部隊の2人の自衛官が本作の主人公です。一人は定年間近の准陸尉。一人は2任期目の若い陸士長。この二人が宿営地で続けて起こる事件の捜査を任されるところから、物語は始まります。時期は2014年の2月です。
 等身大の一人の人間としての自衛官の物語を綴りました。次々と起こってしまう事件を通して、謎を解決しながらも、彼らは自分の過去と未来の問題に直面します。そして、想定以上の事件が起こり、人生の選択を問われます。そんな極限状態で彼らは何を選ぶのか……。

 桜星──自衛官の矜持を懸けた戦いに、国家と個人の相克の問題に、果たして答えは出るのか!?

 自衛隊に関心のある方、ない方、自分の帰属の問題に悩む方、自らの人生の意義と価値を振り返り戸惑っている方、海外派遣の現実に興味のある方など、多くの皆様に楽しんで頂ければ幸いです。

 プロモーションページはこちらです。

物語の前書きのようなもの

 あれを見よ 深山の桜 咲きにけり 真心尽くせ 人知らずとも

深山の桜

 詠み人知らずの上記の短歌と、一枚の写真からこの物語は始まりました。写真はネタばれになるので公開できないのですが……。

 誰も来ない深山でひっそりと桜が咲いていることがあります。花壇の中で多くの人々の賞賛を浴びることもなく、誰もいない場所で美しさを誇ることなく、力強く花を咲かせる桜があります。

 そんな深山の桜の物語を綴りました。福島の地でひっそりと咲く向日葵のように、この日本に、そして世界で凜とした花を咲かせている人は数多くいることと思います。

 物語の構成に2か月近い時間をかけました。集中して執筆した3週間、常に心がどこか別の世界に浮遊しているようでした。物語に同期し、主人公に共鳴し、何かに導かれながら作品を書き上げることができました。思いがけず、賞をいただき、作品を上梓する機会に恵まれました。
 物語を語る技術は正直未熟です。勉強の日々が続いています。想いを十分に伝えることができているのかどうか分かりません。果たしてこの物語は読者にとって面白いのだろうか? 今も自問自答の日々が続いています。

 それでも手にとっていただける読者の皆様のために、自らの今できる全ての力を、すべてを注ぎ込んだ作品となりました。お手にとっていただければ幸いです。